集団と集団の美

 個体の美と集団の美は何がどのように異なるのか。実際に集団美を巧みに使っているように思われる例はあちこちに溢れている。集団で生きるのが生物の基本的な本性の一つであることを考えるなら、個体の美は集団の美から派生したものと考えるべきなのかも知れない。国立日立海浜公園は集団の美を売り物にしているようで、ネモフィラの花の集団はその一つ。確かに、チューリップもネモフィラも数で美しさが発揮できる花で、一輪の美しさを強調する正統的なバラやキクとは好対照をなしているように思われる。

 日本人は集団行動が得意だと言われ、日本人自身がそれを肯定しているのだが、日本人は美学のレベルでも集団の美しさに敏感なのだと言わんばかりである。個性の美しさと集団の美しさは確かに異なるようだが、集団は果たして個性をもてるのだろうか。

 画像のチューリップ、ネモフィラ、ベロニカ、オオキバナカタバミはなぜか集団が似合う。花自体が単純というのではないのだが、単体では物足りないのである。いずれも近くの公園のもので、日立の海浜公園よりずっと小規模な集団だが、集団の美を十分感じさせるのである。

 集団で棲息することは生物の基本的な適応戦略の一つであることを考えるなら、集団の美は個体の美とは違う適応の一形態だと考えたくなる。だが、生物種が集団として存続するために各個体伸びがあれば十分ではないかという反論もでき、「個体と集団の違いは個体の美と集団の美の違いではない」ことを思い出すべきなのだろう。