私たちは輪廻転生という仏教思想を習い、そこから解脱することが仏教の修行だと教えられたのだが、お盆には祖先が帰ってくると信じて疑わない。お盆と輪廻転生を突き詰めて考えないことが日本的な生き方で、それに親しんだ私のお盆の思い出の一つが仏花。その代表であるヒャクニチソウは私の記憶の中ではお盆の花だった。ところが、ヒャクニチソウはメキシコ高原が原産。メキシコでは16世紀以前から栽培されていて、日本には1862年頃渡来した。となれば、ヒャクニチソウは仏花としては新参者で、お盆を彩る新素材の一つだったのだ。
ヒャクニチソウは日照と高温多湿を好み、花もちがよい。今ではジニアという名前の方がよく使われるが、ドイツの植物学者J. G. Zinnの名前に由来する。夏から晩秋にかけて長く花を咲かせることから、日本では百日草(ヒャクニチソウ)と呼ばれる。
*サルスベリは漢字で「猿滑り」、「百日紅」、「紫薇」などと書く。「猿滑り」は、樹皮がツルツルしていて、猿でも滑り落ちてしまいそうな木であるため。「紫薇」は「しび」とも読み、サルスベリの漢名。ところが、「千日紅」はセンニチコウと読み、「百日草」の読み方と同じである。