クワの実:ヤマグワとマグワ

 私は「山の栗」と「屋敷の栗」が違うことを子供の頃から知っていたが、「山の桑」と「里の桑」の違いは知らなかった。だが、それが大した違いではなく、一方を知っていれば他方も似たようなものだということを知ったのは大人になってから。ブナ科クリ属のクリがシバグリ(柴栗)またはヤマグリ(山栗)と栽培種に分かれるように、クワ科クワ属のクワもヤマグワ(山桑)とマグワ(真桑)に分かれる。いずれの実も山の方が小さい。

 湾岸地域では栗も柿も見ない。栗の花の香りが懐かしい。栗がないように、桑も植えられていないと勝手に思い込んでいたが、桑の木が辰巳の公園に植えられていたのを見つけたのは昨年の今頃。しかも、ヤマグワとマグワの二種類ともあり、妙に嬉しい気持ちになった。造園業者に拍手したい気持ちは子供の頃の記憶を想起させてくれたからだが、子供時代に親しんだ自然がそこに僅かでも再現されたかのようで、桑の葉や実が一瞬私を記憶の世界へ運んでくれた。

 今年もその再訪を楽しみにしていた。クワの花は4-5月頃に咲くが、花弁はなく、雄花には4本の雄しべ、雌花には1本の雌しべがある。花の後には果実ができ、でき始めの若い実は白っぽく、次第に赤、紫、黒へと変化しながら熟していく。熟した実は柔らかくて甘みがあり、昔は子供のオヤツになった。

  ヤマグワ、マグワの葉は互生、葉身の形は切れ込みのないものからあるものまで多様。ヤマグワの実はマグワの実と比較すると小さい。ヤマグワとマグワとの見分けは、果実についている花柱が長く、多い方がヤマグワ。マグワは花柱がほとんど残らない。ヤマグワは山野に自生するクワで、ほとんどが雌雄異株の落葉高木。マグワは養蚕に使われるクワで、中国原産。紀元前にインドや日本に伝わり、シルクロードを経て12世紀にヨーロッパへ伝えられた。

*最初の三枚の画像がマグワ、残りの三枚がヤマグワと思われる。

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