照手桃の花

 テルテモモ(照手桃)は花を観賞するために改良されたハナモモです。サクラの花の咲く時期に前後して開花の最盛期を迎え、あでやかなピンクや赤、白の花が春の庭を彩ります。モモは古来より中国では災いを除き、福を招くとされてきました。日本への渡来は古く、弥生時代と言われています。『古事記』にもイザナギが黄泉の国から逃げ帰るときに悪鬼にモモを投げつけ、退散させたとあることから、古い時代から栽培されていたことが窺えます。平安時代には3月3日の桃の節句が祝われ、モモの花が欠かせないものでした。
 このようにモモは太古から日本人に親しまれてきましたが、観賞用のハナモモとして改良が行われるようになったのは江戸時代に入ってからです。現在もハナモモの品種改良はあまり進んでおらず、栽培されている園芸品種には江戸時代に作出されたものが多く残っています。従来種は枝が垂れ、四方に広がるものでしたが、20世紀末に神奈川県園芸試験場相模原分場で品種改良が行われ、ほうき型の樹形のハナモモが生まれました。このハナモモの一つは、近隣を流れる姥川流域に伝わる照手姫伝説にちなみ、「照手桃」と名づけられました(画像)。

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