藍藻(シアノバクテリア):光合成と共生

 陸上の植物は5億年もの歴史があるのですが、水中に棲む藻類はなんとそれよりずっと長い30億年もの歴史があり、その途方もなく長い歴史の中で「共生」が今の多様性を生み出すことになりました。30億年も前に「光合成」をスタートさせ、酸素を作り出し、原始大気を汚染し、現在のような酸素に富んだ地球大気に変えた張本人が藍藻(シアノバクテリア)という「原核生物」の藻類でした。藍藻光合成によって酸素を発生させ、大気を汚染し、この地球上を現在のような酸素にとんだ環境に変えた立役者なのです。そして、真核生物の細胞内に共生することによって葉緑体となり、地球上に繁栄する植物へと進化したのです。この生物こそが、現在の地球環境とその中の生態系を現在見られるものへと変えたのです。地球環境を変えた最初の生物が藍藻だったとすれば、二番目の汚染者は人類だというのが現在の状況なのです。

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 藍藻は真核生物である他の藻類、例えば緑藻や紅藻とは異なり、大腸菌のようなバクテリアと同じ原核生物の一種で、一般的にはシアノバクテリアと呼ばれています。一方、動物や植物、菌類(カビやキノコ類)は真核生物です。藍藻光合成を始め、大気中に酸素が増えてくる(地球史の中の最大規模の環境汚染)のと足並みをそろえるように、単純な原核細胞から真核細胞が誕生してきました。真核細胞の構造は原核細胞に比べるとはるかに複雑で、いろいろな機能が増えました。原核細胞が木の小舟とすると、真核細胞は蒸気船といったところです。
 約15億年前、餌を食べていた「原生生物」が、シアノバクテリアを自分の体のなかに取込んだと考えられています。シアノバクテリア光合成を行って栄養や酸素をつくりますが、原生生物の体のなかに取り込まれてからも光合成を続け、原生生物とシアノバクテリアはいつしか一つの生き物になっていきました。違う種類の生き物が一緒に生きることは「共生」と呼ばれています。原生生物の体の中に取り込まれて共生するようになったシアノバクテリアは、いつしか光合成を専門におこなう葉緑体という器官に変わっていきます。こうしてできた葉緑体を使って光合成をはじめた生き物が藻類の祖先です。
 共生の話はまだ続きます。ハプト藻などの藻類の体のつくりを顕微鏡でさらに詳しく見てみると、葉緑体の二枚の膜の外側に、さらにもう二枚の膜が覆っていることがわかります。これは、シアノバクテリアが原生生物に取り込まれたあと、さらに別の生きものに取り込まれたことを示めしています。二度目の共生ですから「二次共生」です。それにより光合成をするようになった生き物が「二次植物」です。二次植物が生まれたことによって藻類が種類を増やし、様々な生き方が登場する原因になりました。
 二次植物の祖先は、藻類を餌として細胞に取り込んで消化していましたが、長い時間をかけて、藻類と共生し、体のなかで葉緑体として保つことができるようになりました。葉緑体を使い、光合成をするのが植物の本性ですから、二次植物は次第に植物の生きかたを身につけていったのです。二次植物が植物の生きかたを獲得していく歩みには、途中の段階があるはずです。その証拠となるような生きものが「ハテナ」だったのです。ハテナという植物が発見されて評判になりました。そのハテナが二個体に分裂したとき、一方の個体にすべての共生葉緑体が引き継がれ、もう一方の個体は共生葉緑体をもちません。とても不思議な現象なので、ハテナと命名されました。共生葉緑体をもっている個体は植物のように光合成を行うことができますが、それをもたない個体は動物のようにエサを食べて生活します。現在の藻類は一次植物と二次植物になる前、つまり「同棲生活」が始まったときに、ハテナと同じようなことを行っていたのかも知れません。
 こうして、植物の本性が酸素を生み出すことだとまとめるならば、人のような動物の本性は炭素の放出だということができるでしょう。

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