クチナシの花たち

 梅雨入りはまだだが、クチナシの花が咲き出している。クチナシはアカネ科クチナシ属の常緑低木。森の低木として自生するが、園芸用として人気があり、湾岸地域でもあちこちで見られる。乾燥した果実は生薬、漢方薬の原料となる。実が熟しても裂開せず、そこからし「口無し」の名がついた。

 花期は6-7月で、葉腋から短い柄を出し、一個ずつ花を咲かせる。花弁は基部が筒状で、先は大きく6弁に分かれ、最初は白色だが、徐々に黄色に変わっていく。花にはジャスミンのような芳香があり、遠くからでも香ってくる。一重ものは早咲きで、八重ものはやや遅咲き(画像)。八重咲きものは実がならない。

 クチナシは秋には橙赤色の果実をつける。この果実は黄色の染料としても利用される。近縁種に樹高30~40cmの低木で地表を這うように枝が横に広がるコクチナシや葉が丸いマルバクチナシなどがある。

 クチナシ幾何学的に均整の取れた一重の花と八重の多様な花弁のいずれが好きかと聞かれると、私など困ってしまう。ハマナスとバラなら答えやすいのだが、ヤマブキやサクラの一重と八重となると、答えにくいのによく似ている。一重と八重のいずれが適応的(adaptive)なのかと問いたくなるが、八重の花のほとんどは人が生み出した人工的なものであり、人の社会では八重がより適応的なのだろう。