マグノリアとしてのハクモクレン

 最近は格好よくマグノリアと呼ばれることが増えたハクモクレンは、花が新葉の出る少し前に卵が立ち並ぶように上向きに咲き始め、横に広がるコブシ(辛夷)と違って花弁が開き切りません。全開しない花とは不思議に見えますが、咲かない花とは違ってそれ程珍しいことではありません。花びらは太陽の光を受けて南側が膨らむため、花先は北側を指すことになり、このことから、「磁石の木」と呼ばれることもあります。

 ハクモクレンの花びらは9枚。そのうちの3枚は萼片で、花弁と同じ形です。日本に古くから自生するコブシは咲いた花の付け根に小さい葉がみられます(タムシバにはない)。また、タムシバは6枚花びらの下側に、それを小さくした3枚の萼片があります。葉はコブシが倒広卵形、タムシバは長楕円形です。

 それぞれの間にこのような違いがあっても、ハクモクレン、コブシ、タムシバはどれも似ています。そのため、私にはこれらの間の違いの詮索より、マグノリアという総称が妙に現実味を帯びてくるのです。ハクモクレンタムシバ、コブシそれぞれが生物個体として訴えたいことをマグノリアが代表していて、違いを単なる個体差のように扱った、(少々大袈裟に言えば)最古の花木の歴史を通じた姿が浮かび上がってきます。すると、私にはマグノリアが代表種として歴史的実体であり、その個々の例がハクモクレン、コブシ、タムシバに思えてくるのです。年齢のせいか、なんだかとても反ダーウィン的で、ヘーゲル的な考えに取り憑かれたようです。

(コブシ)

タムシバ