キシュウミカン

 冬が来ると、炬燵に入って蜜柑を食べるというのが私の子供の頃の定番の楽しみでした。でも、どんな蜜柑を食べたかとなると、途端に記憶は定かでなくなるのですが、私は戦後生まれですから、温州みかんだったと推測できます。

 その温州みかんは日本生まれといわれています。400年ほど前に中国から鹿児島県に伝わった柑橘の種から偶然生まれたのが日本原産のオンシュウミカン。温州みかんの栽培が本格的に行われるようになったのは明治に入ってからです。

 一方、キシュウミカン(紀州蜜柑、Citrus kinokuni)は温州みかんよりも歴史が古く、別名は「コミカン」、「キノクニミカン」。中国から熊本県に渡来し、それが和歌山県に伝わり、紀州ミカンの名前になったようです。紀伊国屋文左衛門は江戸でミカンが品薄だったとき、紀州から大量に運んで売ったことで、大きな財を成しました。学名には「紀伊国」が入っています。