アヤメ科のグラジオラスの別名は「唐菖蒲(とうしょうぶ)」で、それをヒントに植物図鑑のアプリを検索してみると、以下のような順に植物名の特定が進行していったのだが、結局最後はネット上の書き込みから探り当てるしかなかった。今話題のChat GPTで検索するには名前のわからない対象をどう特定するのか、植物図鑑をコピペすることで正確な特定ができるのか、考え込んでしまった。
アプリの図鑑によれば、まず該当したのがアシダンセラ(Acidanthera bicolor(syn. Gladiolus murielae))。アヤメ科グラジオラス属の被子植物で、アフリカ東部のエチオピアからマラウィ原産。学名が二つあり、Acidantheraはギリシャ語の akis(針)+anthera(葯)が語源、bicolorは「二色の」、Gladiolusはラテン語の gladium(剣)が語源で、葉の形が剣に似ていることに由来。Murielaeはイギリスの植物学者Ernest Wilsonの娘Muriel Wilson に因む。「アフリカ東部、エキオピアからマラウが原産で、高さは100㎝近くになる。葉は直立し、薄くて剣状。芳香があり、白色で咽にえび茶色の斑紋がある花を夏の終わりから秋の初めに咲かせる。」という説明と、掲載画像から、私が見たものとはあちこちで違う。
次に登場するのがグラジオラス・カルネウス(Gladiolus carneus)で、これも南アフリカ原産で、アヤメ科グラジオラス属の多年草。「花茎を伸ばして、大きなピンクの花を咲かせる。花弁には濃い紅赤色の斑が入る。種小名のcarneusは同じくラテン語で「肉色の」と言う意味で、花色と掲載画像から、私が見たものによく似ているが、それでも微妙に異なる。
そこで、園芸の記録や日記などを漁り、「春咲きグラジオラス・ピュアベール」を見つける。「ピュアベール」を調べると、2001年にグラジオラスの一つとして品種登録されたもので、5月前後に開花することが判明する。花は昼間に開き、夜になると閉じる。学名はGladiolus cvs.(グラジオラスの園芸品種で、基本の植物を交配させて人工的に作られた植物のことで、その場合は‘’でくくるか、cv.(cvs.)の後に園芸品種名を書く。cvはcultivar の略。属名(+種小名)+cv. (+‘園芸品種名’)となるが、園芸品種名や種小名は省く場合もある。)このピュアベールは私が見たものとピッタリだとわかる。
こうして、私が見た植物はグラジオラス・ピュアベールであり、それはアヤメ科グラジオラス属で、南アフリカ共和国などに自生する幾つかのグラジオラス属の植物を交配して作り出された園芸品種の一つ、ということで一件落着。