モミジの花と実

 「紅葉」は秋の季語であるが、4月に入り、モミジの花が密やかに咲き、その後すぐに実がつき出す。今新緑の中でモミジの実は紅く色づき始めている。モミジと言えば、葉が主役で、花も実も目立たない。その注目されない花と実が新緑の世界で息づいている。

 モミジは4月頃に花が咲く。花は地味だが、房になってたれる小さな姿があちこちに見られ、紅い小さな花弁から白い雄しべが飛び出している。花が終わると、すぐにブーメランのような翼果(よくか)をつける。モミジの実はプロペラ状の翼がある翼果で、赤く色づき熟すとその翼で風に乗り、クルクルと回転しながら落ちていく。

 だが、人々の関心はモミジの花と実には昔から薄いものだった。そのためか、「散る桜 残る桜も 散る桜」の桜はサクラの花を指し、「裏を見せ 表を見せて 散るもみじ」のもみじはモミジの葉を指している。