色を知覚するという観点からは、人間が知覚している生活世界像は外部世界を直接に反映してはいません。むしろ、それは脳が作り上げたものです。光(電磁波)自体に何かの色が備わっているのではありません。色は様々な波長の光の混合から脳が自ら作り上げたものです。
知覚から独立した白と黒は自然界には存在しない色です。というのも、私たちは光そのもの、闇そのものを経験したことがなく、生活世界は光と闇が適度に混ざり合ったものです。白は光、黒は闇と同義とすれば、「白」は闇のまったくない光を表し、同じように、「黒」は光のまったくない闇を示し、共に色ではありません。
このような形而上学的で、超自然的(meta-physical)な説明を離れ、自然科学的(physical)に色を見つめてみましょう。完全な黒色というのを完全黒体と解釈すれば、少なくとも地球上には存在しません。黒色は理論的には電磁波の反射ゼロというものなので、理想気体(ideal gas)と同じようなものになります。ブラックホールがいちばんこれに近いのかもしれませんが、私たちの生活世界には完全な黒色はないのです。
こうして、様々に異なるレベルでの色の相互関係は複雑怪奇であり、実際の生活世界の中で様々な色を感じて生きている私たちには何かわざとらしく、自然的とは思えないのです。私はこれまで赤い実とその画像を多く記してきました。そこで、まずは黒い実の画像も加えておきましょう。白い花や黒い実を見比べながら、自然の中の色について自然的に感じ、味わってみて下さい。