タチアオイの黒い花

 人間は3原色(赤・緑・青)、犬や猫は2原色(赤・青)、鳥や昆虫は4原色(赤・緑・青・透明(紫外線))を見分けることができるそうだが、人間は黒色に特別の関心を払ってきた。『黒いチューリップ』というデュマの小説はチューリップバブルがテーマになり、映画化されている。最近でも、「真・黒色無双」のポルシェ911は99%以上の光を吸収し、99.5%以上の光を吸収する暗黒シートが作られ、真に黒い色が人々を惹きつけている。「黒っぽい色、黒色擬き」は真に黒い色に近づき続けている。

 私も黒色に惹きつけられる一人なのだが、暑い夏の午後、その私の眼前に黒いタチアオイが聳えている。一瞬黒いものが花とはわからなかったのだが、確かに夏空に向かって黒い花が咲いている。今はあちこちでタチアオイの花を見ることができるが、どの花も薄い色がおおく、黒のタチアオイは私自身初めてである。

 そこで、タチアオイの黒い花を調べてみると、「黒タチアオイ、黒立葵、Black Holly Hock」などと呼ばれているようである。黒い花は他にも結構見つかり、格別珍しいものではないのだが、タチアオイの黒花は上位にランクされていて、黒色に近く、光沢のある花弁も美しく、開花期は7月。

 人間の黒い花への好奇心はとても人間的で、他の動物に比べてとても強いようである。黒と好対照の白への強い関心、さらには有彩色も忘れてはならず、結局は色そのものへの好奇心ということになる。