ものとその名前(4):「ウメ」の名前

 ウメは、バラ科サクラ属の落葉高木。5枚の花弁をもつ花を咲かせます。花の色は白、またはピンクから赤。開花は1月中旬頃から咲き出すもの、3月中旬頃から咲き出すものなど様々で、サクラとちがって、咲き方も散り方もゆっくりしています。そのウメが今年は既に咲き始めています。

 ウメは中国原産で、『万葉集』では白梅が、平安時代には紅梅が流行しました(画像は白梅)。江戸時代には、各藩が非常食として梅干を作ることを奨励したため、梅林が増えました。梅干し用の梅は、花を愛でる「花ウメ」とは違って、「実ウメ」と呼ばれます。

 ところで、「ウメ」、「梅」という名前は特定の人やペットの名前とどこが違うのでしょうか。私の名前や私の猫の名前は固有名詞、「梅」や「ウメ」は一般名詞と区別されています。直感的には私の名前は私という個人にだけつけられた名前で、ユニークな対象の名前ということになっています(それは建前で、同じ名前の別人は多い)。でも、名前「ウメ」は共通の遺伝構造をもつ対象の集合につけられた名前です。これを言い換えると、固有名詞は唯一無二の特定の対象の名前であるのに対し、一般名詞のウメは「xはウメである」という一項述語の文の省略形です(xは変項と呼ばれ、数学の変数と基本的に同じ(共に英語ではvariable)で、個物を指す主語)。つまり、「ウメ」や「梅」は見かけ上の名詞で、実際は「ウメである」、「梅である」といた述語なのです。変項、あるいは変数のx自然言語の指示代名詞(これ、それ、あれ)のことです。