団地のクレマチス:センニンソウの花

 辰巳1丁目アパートは1967年からつくられ、5階建て87棟からなるマンモス団地で、工業地帯で働く人たちの多くが暮らしてきた。団地は2027年までに高層化する予定で、今工事中なのだが、古い団地内には実に多様な植物が植えられ、近くに散在する高層マンションの植栽とはまるで違っている。そのためか、私の散歩の定番コースになっている。

 歩道の植込みにいい匂いがして、足を止める。白い十字の花が、蔓状にはい上ってたくさん咲いている。それがセンニンソウ(仙人草、Clematis terniflora)。蕊が長く、花びらは細いが、クレマチスに似ている。花に近づくと、甘い匂いが漂っている。見た目の派手なクレマチスに匂いはないが、このセンニンソウはいい香りがする。夏の終わり頃から咲き出し、とても清楚に見える。「仙人草」という名前は実の先端につく白い羽毛状のものを仙人の髭に見立てたことから。そのセンニチソウが歩道の植込みの中に入り混じって葛を伸ばし、無数の花をつけている。

 センニンソウは日本全国に分布する半木本性の常緑の蔓植物。花はたくさん集まって咲き、遠くからもセンニンソウであることがよくわかる。畑と森林の境目や水路の周辺などによく生育している。キンポウゲ科の植物には有毒であるものが多いが、センニンソウも毒草であり、牛や馬は食べない。そこから別名が「馬食わず(うまくわず)」。

*最後の画像はセンニンソウが咲き誇る傍にいたナナホシテントウ