「大手毬」と「小手毬」と書くなら、「大人」と「小人」、「大鷺」と「小鷺」などを連想してしまう。そして、オオデマリは立派な樹木だが、コデマリは草木だという私の個人的な印象につながる。ところが、これが実は真っ赤な嘘で、オオデマリとコデマリは赤の他人。
花の小さいコデマリとの対比から、オオデマリの名がついたのだが、欧米ではジャパニーズ・スノーボール(手毬花)と呼ばれる。オオデマリはレンプクソウ科カマズミ属の日本原産の園芸種で、中国、台湾に自生するヤブデマリを改良した品種である。オオデマリはその姿が紫陽花(特に、アナベル)とそっくりで、白い花が丸く固まって咲く。大きさは直径10㎝程度。開花は紫陽花より早く、今年は既に開花している。秋には葉が紅葉して、赤い実も楽しめる。
コデマリの名前の由来も白い小さな花が固まって咲くことからで、別名は手毬花(テマリバナ)、鈴懸(スズカケ)。オオデマリと似ているのは、白い花が固まって咲くところだけで、春のユキヤナギを拡大したものに近い。ユキヤナギのように、白い小さな花がいっぱい垂れ下がるように咲く。コデマリはオオデマリではなく、ユキヤナギの仲間なのである。ユキヤナギもコデマリもバラ科のシモツケ属で、湾岸地域ではあちこちで見かける。そのコデマリの花も咲き出している。
要するに、コデマリはオオデマリとは親戚でもなんでもなく、ユキヤナギの仲間であり、日常的な命名のいい加減さが浮き彫りになるのである。