ナガコガネグモ、そしてジョロウグモは網をつくるクモとして私の周りでもよく見かける。ナガコガネグモの背は白、黒、黄が均等で、細長く、ジョロウグモは腹が大きく、内側に赤い紋がついていて、いずれもかなり派手である。
芥川の「蜘蛛の糸」(くものいと)は児童向けの短編で、釈迦の慈悲でカンダタが蜘蛛の糸を登るも、糸が切れ、地獄に逆戻りする話。地獄へ堕ちたカンダタを見ていた釈迦は悲しそうな顔をして蓮池から立ち去るのだが、釈迦が何を悲しんだのか、私には未だに判然とせず、多数の解釈が乱立したまま。それが蜘蛛とその「糸や巣(網)」への私の好奇心の発端になっている。残念ながら、私は昆虫少年ではなかった。
クモはまず自分のいる所から向こう側まで糸を張る。クモは自分の尻から糸を出し、それを風に乗せて飛ばす。糸が向こう側の木の枝などにくっつくと、糸の上を往復して糸を強くする。次に、この糸の真ん中で糸を出して、体の重さを利用して下に降りていく。Y字形に下がっていき、着地できる場所を見つけて、大きな枠が完成。この作業を繰り返して、中心から四方八方に糸を張っていく。らせん状に糸を張り、巣は1時間ほどで完成。
クモの糸はカイコの糸と同じタンパク質である。クモの巣に絡まると、ねばねばしているのがわかる。このねばねばで虫を捕える。ねばねばのクモの巣をクモ自身が平気で歩けるのは、糸に秘密がある。中心に向かって縦糸と外側の糸には粘り気がなく、らせん状に張った横糸には粘り気がある。クモは、粘り気のない糸を選んで動く。
女尊男卑がクモの世界。ナガコガネグモの雌雄の同居期間はお盆頃で短く、オスはメスの最終脱皮直後に求愛するが、メスに捕食される場合がよくある。ジョロウグモのオスはメスの半分以下の大きさしかない。いずれのメスグモも10~11月頃産卵し、冬が来る前に死んでしまう。画像はいずれもメス。