素直に学ぼう

 緊急事態宣言が全土に拡大され、5月の大型連休に都市部から地方への移動の自粛が要請された。今のところ唯一新型コロナウイルス対策に成功している国となれば、台湾だけ(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041500944&g=int)。感染症発展途上国の日本は素直に台湾の対策を学び、さらに韓国の徹底したPCR検査と医療崩壊を防ぐシステムも真似るべきなのである。台湾だけでなく、ドイツの対応を知っておくことも役立つだろう。首相の会見と、メルケル首相やシュタインマイヤー大統領のそれを比較して、何が違うか知っておくのがよいだろう(https://japan.diplo.de/ja-ja/aktuelles)。

・台湾が日本にマスクを送る

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200416/k10012391411000.html

・ニューズウイーク、台湾への評価

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/04/post-93156.php

台湾と日本の差

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00838/

・台湾の対策

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00853/?pnum=4

・日本台湾交流協会、台湾の対策経緯

https://www.koryu.or.jp/tabid2169.html

・ディジタル活用の台湾

https://www.nri.com/jp/keyword/proposal/20200414

 

 さて、とても気になる提言が出された。日本感染症学会と日本感染環境学会は、感染症診療のあり方を変えていくべきとして、診療に携わる臨床現場などに向けて「新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方」を発表(この名称で検索)。軽症の患者に対してはPCR検査を勧めず、医療崩壊を防ぐために重症患者の治療に特化することを提言している。医療の立場からの提言だが、患者の立場からその提言を眺めてみよう。

 「考え方」では現状を踏まえ、感染者が感染症病棟のベッドを占拠する率が高まっていく中で感染症診療の在り方を柔軟かつ適正に変えていくことが必要だとし、PCR検査の対象を「入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性肺炎を強く疑う症例」と規定。同時に「軽症患者」に対しては、現状の帰国者・接触者相談センターを介した検査体制の中では「基本的にPCR検査を推奨しない」と明記している。提言をまとめた舘田理事長は「検査を受けられない不安な気持ちは分かるが、治療法もなく、軽症でも入院が必要になるなど、医療資源を逼迫させてしまう可能性が学会では危惧されていた」と言う。

 「考え方」で強調されているのが、肺炎などを発症した重症患者の早期発見と医療的な対応のあり方。重症化の指標としてはCT検査による肺炎を疑われる画像の広がりの程度、血液中の酸素量の減少、血液検査でのリンパ球や血小板の減少、炎症を示す検査数値の上昇などを挙げ、「この病気は急速に症状が悪化することもある。長引く倦怠感や食欲不振といった自覚症状、高熱の持続なども合わせて、診療に携わる側は経過観察中でもこれらの項目の変化を注意深く見守ってほしい」と舘田理事長は話す。彼によれば、感染者の8割が軽症ですむことを考えれば、重要なのは重症化した患者を救命することである。

 患者は、8割が軽症で済んでも、2割の重症者がどのように特定できるのかは最初からわかるのではなく、だから、PCR検査は必要だと考える。理事長は、どうやって感染している人を見つけるのか。感染者がわかっていて、さらに、その中の誰が重症になるかわかるのであれば、この理事長の「考え方」はわかるのだが、患者にとっては、自分が感染し、その中で自分が重症化するかなど最初からわかる筈がない。だから、PCR検査が必要なのである。厚労省のQ&Aの最初の問いは「診断方法は何か」で、その答えはPCR検査。

 「考え方」によれば、「地域の流行状況によるが、PCR 検査の原則適応は、「入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性肺炎を強く疑う症例」とする。軽症例には基本的に PCR 検査を推奨しない。時間の経過とともに重症化傾向がみられた場合にはPCR法の実施も考慮する。」と述べられている。「適応」は恐らく「適用」だろう。肺炎の疑いがあるが、症状がない、あるいは軽症の人は一体どうなってしまうのか。感染していれば、クラスターをつくる可能性をもっている。検査をしていれば、その可能性を潰すことができる。

 不思議なのは、なぜ今頃このような「考え方」が出されたのかである。これが日本を代表する感染症の学会の考え方であるとすれば、それは明らかにドイツ、イギリス、韓国、そして台湾の考え方とは違っている。