老人の私的まとめ

 最近のSARSはほぼすべての感染者が重症化し、そのためにすべての感染連鎖を検出し、それらをすべて断ち切ることで封じ込めに成功した。だが、 COVID-19は多くの感染者が無症候、軽症で、すべての感染連鎖を見つけることは不可能。ウイルスの弱さゆえに、対策の難しいのがコロナウイルス。だが、中国での経験から感染は主に接触感染であり、接触機会を減らすことによって大規模な流行を終結させることができた。

 武漢は都市封鎖、外出の厳格な制限、集会の制限によってウイルスをほぼ完全に制御した。また、シンガポールでは感染連鎖を見つけることによって流行を制御。日本は中国やシンガポールの対策とは異なる日本独自の対策で取り組んでいる。流行の基本の考えは基本再生産数R0で表すことができる。R0=1なら、定常状態のまま。R0<1なら、流行せずウイルスは消滅。R≩1なら、流行が起こる。コロナウイルスの重要な事実として、多くの人が誰にも感染させないのに流行が起きている。これは多くの人に感染させている人がいると考えないと説明できない(スーパースプレッダーの存在)。リンクの追えない感染者からつながった患者の集積のうち5人以上のものを「クラスター」とする。クラスターが起きなければ、R0<1で、地域にウイルスが入っても流行にはならない。それゆえ、スーパースプレッダーのつくり出すクラスターを潰せばR0<1となり、流行を起こすことなく、コントロールできる。

 従って、日本の対策はクラスター(集団)の早期発見と対応、さらに、患者の早期診断、重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保、市民の行動変容の三つとなる。感染者、接触者、感染連鎖、クラスター連鎖はコントロールされている限り、大規模な地域流行につながらない。ドイツや韓国のようにPCR検査を対策の中心とした場合、初期段階ではかなりの割合の感染者を見つけることができるが、無症候の感染者を中心に検出できない例がどうしても残る。とはいえ、検査方法については問題ありである。

 日本方式はここまで一応うまくいってきた。日本の医療レベルが高く、初期段階でクラスターを検知できている。保健所、自治体、地方衛生研究所、感染研などの努力でクラスターが相当程度可視化できている。 都道府県知事の協力でより積極的対策への切り替えが迅速にできている。これからのより厳しい状況に必要なのは保健所、地方衛生研究所、検疫所、クラスター対策班の人員の拡充。そして、日本に住むすべての人の行動変容。さらに、各地の医療機関での感染者の急増による医療崩壊が懸念されるため、迅速な医療体制の構築が不可欠。兎に角、これからが本番。