ブッドレアと言われても、「藤空木」とは誰も思わない。だが、二つは同じ植物で、種子から育てられる園芸植物として人気が高い。現在日本で流通しているブッドレア(フジウツギ)はヨーロッパで品種改良されたもの。元々はアジアなどの地域の植物で日本にも自生種がある。洋風の庭でも和風の庭でも雰囲気を壊さない便利な園芸植物。
フジウツギは一年中葉がある常緑の樹木。高さは2、3mぐらいで、樹木としてはあまり高くない。花は細くて筒状の花が沢山ついて、長さ10㎝から25㎝ぐらいの花穂になる(花は紫色が多いが、画像は白)。花の時期は長く、6月から10月頃にかけて花を咲かせ続ける。
フサフジウツギは明治中期に観賞用として中国より渡来し、一部野生化している。ウツギは北海道から九州、奄美大島まで自生地の分布域は広く、昔は畑など耕作地の境界木としてよく植えられてきた。幹は木釘に加工されて利用される。和名のウツギは、幹が中空であること「空木(ウツギ)」に由来している。私が住む湾岸地域にはハコネウツギがあちこちの公園に植えられている。名前からしてブッドレアと親戚だということになる筈なのだが、まるで違って見える。自然は何とも気紛れで、悪戯好きだと感じたくなるのだが…
正式な日本語名(標準和名)ウツギの他に、「…ウツギ」という種名を持つ植物には、コゴメウツギ、ツクバネウツギ、ドクウツギ、ノリウツギ、ハコネウツギ、フジウツギ、マルバウツギ、ミツバウツギなどがある。だが、ウツギに近縁なのはごく一部で、多くが遠縁。マルバウツギとノリウツギがウツギに近縁で、ウツギと同じアジサイ科に属する。コゴメウツギはバラ科コゴメウツギ属、ツクバネウツギとハコネウツギはスイカズラ科。フジウツギはゴマノハグサ科。こうして、気紛れで悪戯好きなのは自然ではなく、私たち(の命名)にあるようである。