秋(6):ユズ

 西条は「新井の在」という表現が妙に子供の私の耳に残っている。在の西条の親戚の家に大きな柚子の木があり、沢山の柚子がなっていた。それはとても珍しい光景で、今でもぼんやり憶えている。在の農家は新井の街中の家とは違っていて、それも脳裏に刻み込まれている。妙高市の前身の新井は「在郷町」と呼んでいいだろう。城下町、宿場町、門前町ではなく、農家と農産物の集積の町で、幾つもの在をもっていた。
 さて、肝心の柚子は大木になり、果実は比較的大きく、果皮の表面はでこぼこしている。種子が多く、酸味、香りが強い。ミカン属の中でもっとも耐寒性が強い。他の柑橘類より手がかからない。 成長が遅く、「桃栗3年柿8年、柚子の大馬鹿18年」などと呼ばれてきた。海外でも「ユズ」と呼ばれている。原産地は中国の揚子江上流とされている。
 画像はオニユズ(シシユズ、獅子柚子)で、実はブンタン(文旦)の亜種。奈良時代に日本に渡来。画像の姿はまさに「獅子」のようなイカツイ顔立ちで、グロテスクでさえある。オニユズはユズではなくブンタンの仲間なので、ユズのような強い香りは無く、ほのかに柑橘類の香りがする。大きな実で、直径20㎝前後にもなる。表皮と果肉の間にはブンタンと同じように厚く白い綿が詰まっている。

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