タイサンボクの白い花

 タイサンボク(泰山木、大山木)の名前は花、葉、樹形などが大きくて立派なことから、中国山東省の泰山に喩えたものです。また、花の形を大きな盃に見立てて「大盃木」、それから次第に訛って「泰山木」になったという説や、大きな樹形が大山のように見えるところからきているという説があります。ですから、私はずっとタイサンボクは中国が原産だと信じて疑いませんでした。文化や常識にはしばしば嘘が含まれていて、簡単に騙されるのです。でも、だからこそ文化や常識は魅力的で、曲者なのですが…

 タイサンボクはモクレン属の常緑樹で、学名はMagnolia grandifloraモクレンは3月から4月初旬に開花しますが、タイサンボクは今花が咲いています。タイサンボクの花は頭上のものが多く、そのため、下から指をくわえながら見上げるしかありません。タイサンボク自体は北米南部が原産で、なんとミシシッシピー州とルイジアナ州の州花です。

 モクレンは中国原産、タイサンボクは北米原産となれば、私などはハスとスイレンを思い出してしまいます。ハスの原産地はインドで、先史時代に渡来したようですが、スイレンヒツジグサ、エゾノヒツジグサが日本に自生し、それら以外は渡来したものを交配した園芸種で、これも私たちの常識とは随分と違っています。