椿と桜

 最初の二枚の画像は昨年の3月23日のもので、三枚目以降は昨日のもの。今年はおよそ1週間遅れの紅唐子と大島桜のツーショット。二つの開花が重なり、それが今年は4月の初日で、画像は湾岸道路横の歩道のものです。

 『古今和歌集』の第一巻にある在原業平の「世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心は のぞけからまし」は、桜に対する日本人の心情を見事に詠んでいます。椿も既に『万葉集』に九首登場する日本古来の花で、「川上の つらつら椿 つらつらに 見れども飽かず 巨勢の春野は」などと詠まれ、花の美しさのみならず、椿油、薬用として日々の暮らしに寄り添ってきました。

 椿と桜は日本の花卉(かき)文化になくてはならない植物ですが、桜が日本的情緒を代弁する植物であるのに対し、日本原産の椿は国境を超え、リンネにCamellia japonica命名され、世界の花木に変身しました。その二つの花の重なりが日本文化の直感的な風景として凝縮されていて、それを今年も堪能できたと思っています。