紅唐子の雄しべ

 Facebookの友人橋爪さんの「ボクハン」を読み、私の散策路の途中にこのツバキがあることを思い出しました。そして、画像の花を見ながら、ツバキの花についての素人の意見を聞いてほしくなりました。 

 ツバキは花びらだけでなく、雄しべも付け根がくっついているので、雌しべを除いた花全体が落下します。古くからツバキの園芸品種は花の大きさや花弁の模様などと一緒に雄しべの形も鑑賞されてきました。濃い紅色の一重小輪で、「唐子咲き」というおしべの先が変形して花弁のようになり、よじれて盛り上がった特徴のある花で、唐子の部分が赤いのが紅唐子(べにからこ)です(画像)。雄しべが完全に旗弁(旗を立てたような形の花弁)のようになっているものは別名を卜伴(ぼくはん)、日光(じっこう)と言います。確かに、(「乙女椿」には雄しべや雌しべは見られませんが、)ツバキの雄しべの自己主張はとても強く、「筒しべ」、「梅芯(しん)」、「輪芯」、「割りしべ」などと雄しべの姿の違いまでも名前がつけられていて、大抵のツバキの花は強い性的誇張を持っているのがわかります。

 紅唐子は朱色の小輪一重咲きで、外花弁の先端に切り込みが入る江戸時代からの古い品種です(画像)。花の中心部にぎっしり詰まっているのは花弁化した雄しべで、このような花型が唐子(からこ)咲きと呼ばれてきました。ツバキの花の雄しべの自己主張は見事で、それをさらに強調したのが紅唐子です。花弁の塊のような雄しべに対して、本来の花弁は外輪山の地位に甘んじることになっています。ツバキの花の主役は雄しべで、それをさらに強調した一つが紅唐子だというのが私の勝手な意見です。

*最後の画像はツバキの雄しべに惹きつけられたホソヒラタアブ