感じる無常を詠む

 人の死は人それぞれに特異な出来事でありながら、多くのものを共有しています。私がいま共感する無常観は次のように表現されてきました。慈円の無常観は仏教の典型的な無常感をうまく表現していますし、戦後生まれでも戦争経験者たちの中で育った私には土岐善麿の歌は戦後の再出発の背後にある共通の感情です。

 

慈円 昨日見し人はいかにとおどろけどなほ長き夜の夢にぞありける

土岐善麿 あなたは勝つものと思ってゐましたかと老いたる妻のさびしげにいふ