オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)は、オオバコ科クワガタソウ属の越年草。湾岸地域のどこにも見られる雑草。和名はイヌノフグリに似ていて、それより大きいために付けられた。日本に入ったのは明治初年とされ、その後東京から日本中に急速に拡大した。
オオイヌノフグリは春の風物詩で、立春が過ぎた今頃、陽だまりに明るい水色の小さな花を咲かせる。花は太陽に反応して咲き、日が暮れるとしぼむ。
その名前に驚きながらも、小さな花に見惚れ、添付の画像を見てほしい。オオイヌノフグリの花の「自然の姿」はどれだろうか。さらに、「自然の姿」という表現の意味を考えてほしい。地べたで咲いていた姿は大きく拡大されていて、どう見ても「自然の姿」には見えない。だが、オミクロン株の電子顕微鏡画像を見て、それは人工的に生み出された画像だと思う人はどれだけいるだろうか。自然の中に実在する姿と私たちが観察する視覚像と、そのいずれが自然の姿なのかと問われると、これが意外に解答しにくい問いなのである。その素朴な例がオオイヌノフグリの姿である。
こんな風に問うこと自体、人に嫌われるため、益々誰も問わなくなる。問うことが嫌われるだけでなく、問う人も嫌われる始末で、私など随分と損をしてきた。損してきた私の答えは簡単。誰がいつどこでどのように見ても、共通して見えるものが「自然の姿」である。