「ひうち」雑感

 「ひうち」と聞けば、妙高では誰もが「火打山」を指すことを疑いません。しかし、所変われば品変わるで、「火打岳」を指すのが「ひうち」だと思うのは山形の人たちです。「燧ヶ岳(ひうちがだけ)」と書けば、それはまた別の山で、尾瀬の人たちが思い描く山です。このような次第で、「ひうち」は山の指示に関してとても曖昧だということになります。

 ところがそれで済まないのが「ひうち」です。ひらがなの艦名は海上自衛隊の特徴です。艦名は昭和35年海上自衛隊訓令第30号で、人名・都市名は使用しない、艦名の表記はひらがなのみ、同型艦には基本的に同じ系統の名前を使用する、と決められています。ひらがなに決めた理由はよくわかりません。兎も角、海軍時代の重巡洋艦妙高」の名前を引き継いだのがこんごう型護衛艦の3番艦で、その名前が「みょうこう」なのです。さらに、ひうち型多用途支援艦「ひうち」もあり、この「ひうち」は何を指すのか気になります。この「ひうち」は山ではなく、燧灘(ひうちなだ)に由来します。燧灘は瀬戸内海中央部、香川県荘内半島愛媛県高縄半島の間を占める海域で、四国側を指し、北は備後灘に接しています。

 こうして、「ひうち」はとても多義的な単語と言うことになるのですが、「ひうち」を多義的にしたのはひとえに私たちの先祖たちであり、その多義性を今も守り続けているのは私たちなのです。結局、多義性の元凶は私たち自身なのです。