愚行には愚行を

 私の昨日のノート「国立公園、観光、綺麗なごみ」では、自ら始末できないものをつくり、その始末ができないことに苦しむ愚行に対して、それを使わないで我慢するという愚行を書いたために、見方によっては昔に戻れという原理主義的な主張と受け取られても仕方ないと思っています。それでも私の愚行(私の主張)は小さい愚行、野放しになっているごみの不始末は大愚行です。
 「海洋プラスチック問題」は、海に漂うごみ問題。ペットボトルやビニール袋などのプラスチックごみが海に流れ出し、マイクロプラスチックになり、それが魚やクジラの体内に蓄積され、人間にも取り込まれるという問題。比重の重いプラスチックは海の底に沈み、深海にまで莫大な量のプラスチックが存在しています。
 日本は昔からプラスチックの分別回収をしていて、世界でもトップクラス。日本が発表している数字では、日本のプラスチックのリサイクル率は84%で、世界的にも高い数値。コンビニやスーパーで買い物をした食品トレーやビニール袋も、多くの人が分別してプラスチックごみとして捨てるので、これもリサイクルされています。
 でも、日本は回収したプラスチックの7割以上を燃やしています。リサイクルではなく、エネルギーの最終形態である熱にしているのです。では、統計発表の「リサイクル率84%」は何の数字なのか。リサイクルにはマテリアル、ケミカル、サーマルの三つがあります。マテリアルリサイクルは、ペットボトルごみがペットボトルに生まれ変わるとか、廃プラがベンチやバケツに生まれ変わるとか、モノからモノへと生まれ変わるもの。一方、ケミカルリサイクルは廃プラを分子に分解してからプラスチック素材に変えるので、何度でも再生でき、理想的なリサイクルですが、分子に分解するには資金やエネルギーが必要になります。日本のリサイクル率84%のうち、ケミカルリサイクルはわずか4%。マテリアルリサイクルも23%。さらに、そのうち15%は中国に輸出されてからリサイクルされていて、国内でマテリアルリサイクルされていたのは8%だけ(中国は輸入を禁止しました)。残りの56%を占めるのがサーマルリサイクル。サーマルとは、「熱の」こと。ペットボトルなどをごみ焼却炉で燃やし、その熱をエネルギーとして回収するというのがサーマルリサイクル。回収された熱は火力発電や温水プールに利用されます。これが日本のプラスチック「リサイクル」84%のうちの56%の正体。このサーマルリサイクルはどう考えてもリサイクルではありません。リサイクルは循環させることだった筈です。それでも、日本では相変わらずサーマルリサイクルが中心。そのため日本ではマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの技術が発達していません。
 妙高市のクリーンセンターでプラスティックごみを処理していた上越市にも2017年にクリーンセンターができ、自前でプラスティックの熱処理ができるようになったと聞きます。「クリーンセンター」という名前自体、まやかし、ごまかしとしか思えないのですが、これが上記のサーマルリサイクルです。妙高市はプラスティック以外の燃えないゴミは最終処分場に埋め立てています。妙高市は「第 2 次妙高市一般廃棄物処理基本計画 (ごみ処理・生活排水処理・災害廃棄物処理)」(平成28年3月)を出していて、市のごみ処理等はその文書に詳しく載っています。
 このように見てくると、私のような愚行は善行だと言い張ってもよさそうです。