メキシコの女性大統領誕生のニュースから

 メキシコ初の女性大統領が誕生し、メキシコ市の市長にも女性が当選した。社会の中の女性の地位や役割に比べると、メキシコの法律的な男女同権は日本など及びもつかないほどに実現している。だから、都知事選とダブるメキシコの選挙を見ると、とても憂鬱な気分になるのである。今のメキシコの人口は1億3千万を越え、日本の人口1億2千万を凌駕している。

 フランスでは、2000年に通称パリテ法と呼ばれる法律が制定された(paritéは同等、同一を意味するフランス語)。日本では「パリテを「議員の男女比率を同率にする」こと、意思決定の場での男女が同数になることを表現する言葉として使われている。メキシコでは2014年にパリテ法が導入され、2022年2月現在、メキシコの女性国会議員比率は世界ランキング4位(下院50%、上院49.2%)である。これに対して日本は、166位(衆議院9.7%、参議院23.1%)。

 今回の選挙結果についてのNHK記者の社会治安や家庭維持のための女性の役割についてのコメントを聞きながら、私など遅々として進まない日本のことを憂いてしまうのである。クラウディア・シェインバウム(Claudia Sheinbaum Pardo)、クララ・ブルガタメキシコ市長(Clara Marina Brugada Molina)、大統領選で敗れたのは女性対立候補ソチル・ガルベス上院議員(Bertha Xóchitl Gálvez Ruiz、オトミ族出身)は3名とも61歳、シェインバウムもガルベスもUNAMの理系学部出身、ブルガタはメトロポリタナ自治大学出身。

 彼女たちの戸籍上の名前は、例えばブルガタ市長なら、Clara がファーストネーム、Marinaがセカンドネーム、 Brugadaは父方の姓、 Molinaは母方の姓で、これはシェインバウムもガルベスも同様である。結婚しても改名はなく、男女別姓(日本は男女別姓について議論しているだけ)。

 シェインバウムの母方の祖父母はユダヤ系で、ナチスから逃れてブルガリアからメキシコに移住した。父方の祖父母はリトアニア出身。両親はともに科学者で、シェインバウムも物理学を学び、エネルギー工学の博士号を取得。

 こんな出身や経歴を見ると男女平等とは何なのかを改めて考えさせられることになる。まずは単純に「同数というのが平等の出発点」だと割り切るべきなのだろう。