子供の頃の雪解けは春休み期間と重なっていて、3月の中、下旬だった。川辺から雪解けが進み、地肌が次第に見えてくるのだが、その川辺に多かったのがネコヤナギ(猫柳)。ヤナギ科のネコヤナギは落葉低木で、早春の川辺でネコヤナギの花穂(かすい、外見が穂のような花)が揺れる姿は美しく、心躍るものがあった。他のヤナギ類の開花よりも一足早く花を咲かせ、春の訪れを告げる植物になっている。ネコヤナギは水際に生育し、株元は水に浸かるところに育つ。根元からも枝を出し、水に浸ったところからは根を下ろして株が増える。雌雄異株で、雄株と雌株がそれぞれ雄花と雌花を咲かす。銀白色の毛の花穂が特徴的で、「ネコヤナギ」の和名はこれをネコの尾に見立てたことによる。
*ネコヤナギの花はたくさんの小花が房状に集まったもので、これが花穂。ヤナギ科は雌雄異株なので、雄株は雄花、雌株は雌花をそれぞれ咲かせる。花びらはなく、雄花には雄しべ、雌花には雌しべがあり、どちらも綿毛に包まれている。雄花の花穂の長さは約4cm、雌花は約3cm。雄花の方がやや長い。また、雄しべの先端は赤くなり、花粉が黄色いので、雄花の方がややカラフルである。「猫柳」という呼び名は明治時代についたが、江戸時代までは川辺によく生えていることから、「カワヤナギ」と呼ばれていた。
* 銀の爪 くれなゐの爪 猫柳 (竹下しづの女(じょ))
(銀の爪は雌花、くれなゐの爪は雄花を指す)
*名前に「ヤナギ」が共通のユキヤナギ(雪柳)は既に記したが、バラ科シモツケ属の落葉低木。中国原産で、葉が柳の葉に似て細長く、雪が積もったように花を咲かせるところから名前がついた。