スイセンの花たち

 「水仙」の音読みが「スイセン」で、中国古典『天隐子神解章』の仙人についての記述で、「在天曰天仙 在地曰地仙 在水曰水仙」(天にいる仙人を天仙、地にいる仙人を地仙、水にいる仙人を水仙)に由来します。綺麗な花の姿と芳香が「仙人」のようなところから命名されました。また、学名でもある英名「ナルシサス(Narcissus)」はギリシャ神話の美少年の名前で、泉に映った自分の姿に恋をして毎日見つめ続けたら、いつのまにか花になってしまいます。これが「ナルシスト」で、イギリスの国花の一つ。さらに、雪の中に凛として咲き、その可憐な花の風情が日本人の心情に適うということから、「雪中花」とも呼ばれます。

 スイセンイベリア半島を中心に、イギリス、ヨーロッパ中部、北アフリカを含む地中海沿岸地域に25~30種が自生。RHS(英国王立園芸協会)には1万を超す品種が登録されていて、その原種および花形、花色、草姿などから12系統に分類されています。系統によって開花時期が異なり、早いものでは11月中・下旬から開花。いずれも秋から初夏にかけて生育し、夏には枯れて休眠します。

 ニホンズイセン(日本水仙)は日本でスイセンとされている花で、12月から2月にかけ、芳香のある小さな盃状の花を咲かせます。草全体、特に球根に毒があります。ニホンズイセンは房咲き水仙の仲間で、1本の茎にいくつもの花をつける(画像)。これに対してキクラミネウス系は1つの茎に普通1つの花をつけ、ミニ水仙テータテートはその園芸品種(画像)。名前の「tête-à-tête」は、フランス語の「頭」という単語から来ていて、頭を突き合わせて内緒話をするとかいう意味。ミニラッパスイセンとも呼ばれます。

 白いペーパーホワイト(Paper White Narcissus、シロバナスイセン)は房咲き水仙の一種で、ニホンズイセンと同時期に咲きます。ニホンズイセンは黄色い副花冠が特徴ですが、こちらは副花冠が黄色ではなく白です(画像)。ペーパーホワイトは地中海沿岸地方原産で、日本には平安時代に薬草として伝わったようです。園芸品種ではなく、水仙の原種です。名前の由来は花弁が紙のように白いことから。

*「ニホンズイセン」なのか、それとも「ニホンスイセン」なのか。

ミニラッパスイセン

ペーパーホワイト