孫悟空に阿弥陀如来は「この右手のひらから飛び出すことができたら、あなたの勝ち」と言います。悟空はあっという間に十万八千里を飛んだのに、それは如来の手のひらの上の出来事に過ぎなかったのです。阿弥陀如来の手のひらはコスモスであり、悟空はその中で右往左往するだけでした。
「花と蝶」は森進一が歌い、「秋桜」は山口百恵が歌いました。二つを合成すれば、「秋桜と蝶」。これだけなら、単なる言葉遊びに過ぎませんが、コスモスとチョウは秋の今頃にはどこでも見られるありふれた秋の風景です。この風景に『西遊記』の話を重ねるならば、宇宙と仏、悟空とチョウがダブって、一句捻り出したくなる心象風景が生まれます。
秋桜の 花弁の上の 蝶の生
秋桜の 花で躍るや 蝶の性
秋桜を 信じる蝶の 姿かな
コスモスが仏のようなものだとすれば、その中で生きるチョウは素朴な悟空のようです。