ハナミズキとヤマボウシの花はお互いによく似ています。どちらも属が同じなので、似ているのは当然なのですが、ハナミズキはアメリカ原産、ヤマボウシは日本に固有の植物です。では、なぜ太平洋を挟んだアメリカと日本とに同じ属の植物があるのでしょうか?
この謎の解明に寄与したのがペリーの黒船。彼のアメリカ艦隊には植物学者が乗船していて、寄航地で植物を採取し、標本として持ち帰っていました。それらを研究したのがエイサ・グレイで、彼はシーボルトらの著作から既に類似性に気づいていたのですが、標本の同定を通じて、極東アジアの植物とアメリカの植物との類似に確信をもちました。
これら植物は地球全体が暖かい時期、数千年前にベーリング海の北辺の温帯林で進化した植物が共通の祖先です。その後、地球は寒冷化し、数百万年前からは氷河期が繰り返し訪れるようになりました。その寒さのため、これらの植物の一つはアジアを南下し、もう一つがアメリカ大陸を南下して、兄弟のような関係に進化したのです。
ハナミズキは現在ポトマック河畔の桜並木としてアメリカ人に愛されている桜の返礼として1915年日本にもたらされました。ハナミズキは花期には葉がまだ出ておらず、ヤマボウシは葉が出てから葉の上にのるように花が咲きます。また、ハナミズキは秋になると葉が紅葉して落ちる落葉性ですが、ヤマボウシには落葉性と常緑性があります。