天の青、海の青、そして地の青

 言い古された表現とはいえ、地球は本当に青い。空は青く、heavenly blue。海は青く、marine blue。北アメリカ原産のネモフィラは4月頃に青い色の花で大地を覆い、私たちを魅了する。その別名は「瑠璃唐草(るりからくさ)」。そして、ソライロアサガオの別名はHeavenly Blue。これら青色の感覚は感情を生み出し、願望に変わる。これらの青色が天にも地にも、さらには海にも永く続くことを多くの人が望み、そのための自然保護が強く求められている。誰もが望むのは地球がこれまでのように青いままであること。

 私たちがつくり、手に取り、加工できるのが地の青。既に述べたのだが、ツユクサヤグルマギク、そしてソライロアサガオのそれぞれの青色は空の色に似て、息を呑むほどに美しい。そして、ネモフィラデルフィニウムスイートピーアジサイ、アゲラタム等々、それぞれが微妙に異なる青色の花をつける。紫とは違う青の色が何を訴えているのか、何を自己主張しているのか、その色の前でつい考え込んでしまう。考える必要などなく、純粋に青を感じればいいのだが、その感覚から余計な感情や思案が頭をもたげ、それぞれの青の違いは何かなどとつい考え、それらが無くなることを案じてしまうことになるのだ。

 私たちを動かすきっかけ、発端となるのは私たちの願望であり、それを生み出すのが感覚や感情。知識やそれを使った理屈は私たちの行為の説明にはなるが、それだけでは行為の原因にはなりにくい。欲求や願望は知識や理屈ではなく、それらを使うためのエネルギーになっている。青が好きで、青を求める感覚や欲求が駆動力になって、知識が探求され、利用され、青が望む形で実現されることになる。探求される知識は青の化学としてまとめられ、願望実現のための手段として活用される。

 そんな形而上学を具体的に示す好例が青を表現する顔料。人気の高いフェルメールの絵に使われたラピスラズリ北斎や広重の浮世絵のプルシャン・ブルーは私たちを惹きつけてきた。一方、ソライロアサガオ青い花びらには非常に複雑なアントシアニンが含まれ、つぼみの時は赤紫色で開くと青色に変わり,数時間後にしぼむとまた赤紫色になるといった変化を引き起こす。感覚、感情、そして願望の背後には化学を見出すことができる。

 地の青は青の知としてまとめられ、その知が天や海にも敷衍される。

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