師走のキク

 秋のキクもそろそろ終わり。キクは東洋で最古の歴史をもつ観賞用植物の一つ。原産地は中国だが、早くに日本に伝わり、独自の菊文化を生み出してきた。日本独特の美意識にそって発達してきたキクには日本の精神風土や文化が凝縮されている。イギリスのバラと日本の菊とを対にして、比較したくなるのも納得できるというもの。

 だが、今の若者たちにはそれは昭和までの話で、キクが日本を代表する花だと胸を張る人は少ないだろう。トゲのあるバラは仏事にはタブーで、キクは花のもつ気高さから邪気を払い、仏事に最適とされてきたという説明に納得する人も少ないだろう。

 だが、私が子供の頃の仏壇にはキクが供えられていたことを憶えている。仏壇の周りはキクと線香の香りが混じり合っていた。仏壇が消えつつある現在、キクと仏壇の結びつきも消え、キクは普通の花となっている。それでも、キクの品種は非常に多く、花の大きさや形、開花時期もまちまちなので、とても一言でその性質を言い表すことはできない。

 日本の変化はキクと日本人の関係の変化として理解できるというのが私の推測。