キンモクセイの花とその匂い

 今年はなかなかキンモクセイの花が咲かないと気にしていたのですが、この数日で花が開き出しました。湾岸地域にはキンモクセイが多く、気になる強い香りが漂い出しています。キンモクセイ金木犀、巌桂)は小さいオレンジ色の花を木全体に無数に咲かせます。花の数はギンモクセイよりも多く、甘い、強い香りを放ちます。サクラと違って、私はキンモクセイの花の下で弁当を食べる気にはなれません。

 小さな花を沢山つけるキンモクセイですが、その実を見た人は多分誰もいません。それもそのはず、江戸時代に中国から日本へ持ち込まれたのは花が多く、香りも高い雄の木だけで、その後は種子からではなく、取り木で株が増やされました。

 人間でさえ気になるキンモクセイの強い香りは、昆虫たちには大きな雑音のようなものです。その上、花の香りは昆虫を呼び集める手段と考えられていますが、大半の虫はキンモクセイの香りが嫌いで、アブの仲間などが花を訪れるだけです。キンモクセイが強い香りを出す花を大量につけ、花に相当なコストを払っていることが私には不自然に思えてなりません。日本で昼間に行なった研究では、チョウの仲間は一種も訪れず、ハエやハチの仲間が訪れるだけだったと聞いています。

 花は花粉を運んでもらうために、昆虫を呼びます。キンモクセイの花には様々な昆虫が簡単に到達でき、揮発性の化学物質(=匂い)を出すことによって、昆虫の選別を行っているように思われます。でも、その匂いは多くの昆虫に嫌われるもので、匂いの効果は未だ謎のままです。