ノラニンジンの花たち

 ノラニンジンは野菜のニンジンの野生種と言われています。空き地や草地は湾岸地域でもめっきり減ってしまいましたが、久し振りにノラニンジンの群生に出遭いました。「ノラニンジン」は昭和初期に牧野富太郎が見つけました。ノラニンジンはセリ科ニンジン属の一年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物です。ニンジンは中央アジアアフガニスタンが原産。和名の「ノラニンジン」は野生のニンジンという意味です。ノラニンジンは栽培されているニンジンの逸失種と説明されています(*)。ノラニンジンは画像のような大散形花序に多数の白花をつけます。

 オミナエシは『古今和歌集』に「女郎花」と書き、『源氏物語』にも登場しますが、この女郎花に対し、男郎花(オトコエシ)は白花で、同じ時期に同じような花を咲かせます。ノラニンジンの花はこのオトコエシの花に似ていて、よく間違えられます。

*ノラニンジンは栽培種が野生化したものなのか、ノラニンジンこそが栽培ニンジンの原種なのか、よくわかりません。つまり、ノラニンジンは野良犬なのか、オオカミなのか、わからないのです。栽培ニンジンが日本に渡来したのは室町時代で、少なくともノラニンジンは日本で野生化したのではないようです。2016年にニンジンの全ゲノム配列が解読されました。ニンジンの進化的起源だけでなく、ノラニンジンの起源も明らかになることを期待します。