ヒメハラナガツチバチとコヒルガオ

 コヒルガオの花に入り込んでいるのはツチバチの仲間のヒメハラナガツチバチ。キオビツチバチ、キンケハラナガツチバチかとも思ったのだが、素人判定ながらヒメハラナガツチバチの雌と思われる。なぜ潜り込んでいるような姿勢をとっているのかはよくわからない。

 ヒメハラナガツチバチのメスは他のツチバチと色(黒色が強い)が異なり、そこから比較的容易に分類できた。春と秋に発生するようである。一方、ヒメハラナガツチバチのオスは銀毛に覆われ、胸部に黄色の斑紋を有する。

 コヒルガオについても私には気になることがある。今湾岸地域で咲いているのはほぼすべてコヒルガオの特徴を持っている。また、ヒルガオとコヒルガオとの自然交配が続き、二つの境界が曖昧になっていて、両者の雑種ではないかと考えられているのがアイノコヒルガオ。さらに、アサガオセイヨウアサガオハマヒルガオ、ユウガオ(カンピョウ)、ヨルガオ(シロバナユウガオ)など、どれもよく似ていて、紛らわしいことこの上ない。

牧野富太郎『植物一日一題』(青空文庫、「ヒルガオとコヒルガオについての考察」引用)

 「古えより我国の学者はコヒルガオヒルガオとし、ヒルガオをオオヒルガオと呼んでいるが、私の考えはこれと正反対で、右のヒルガオをコヒルガオとし、オオヒルガオヒルガオと認定している。それはそうするのが実際的であり自然的であり、また鑑賞的であって、したがって先人の見解が間違っているとみるからである。

 なぜ昔からの日本の学者達は、その花が爽かで明るく、その大きさが適応で大ならず小ならず、その観た姿がすこぶる眼に快よいヒルガオの花が郊外で薫風にそよぎつつ、そこかしこに咲いているにかかわらず、花が小さくてみすぼらしく色も冴えなく、なんとなく貧相であまり引き立たないコヒルガオを特にヒルガオと称えたかと推測するに、それは古えより我国の学者が、随喜の涙を流して尊重した漢名すなわち中国名が禍をなしてこんな結果を生んだものだと私は確信している。そうでなければ一方に優れた花のヒルガオがあるにもかかわらず、花の美点の淡き貧困なコヒルガオを殊さらに選ぶ理屈はないじゃないか。」