ハコベの花から

 春の私の日常的なミクロ世界の対象がハコベで、日本のどこでも見られる越年性一年草です。地面に平たく這うように葉茎を伸ばし、小さなたまご型の葉を対生させ、先端にこれまた小さな白い花を咲かせます。春の七草としても有名なハコベは越年草で、秋のうちに芽吹き、そのまま越冬して春に生長するサイクルをもっています。ハコベは寒い冬の間もひっそりと、明るいグリーンの新芽を出して春を待っています。

 ハコベの花はとても小さく、花径は直径5mm程度、色は白、花びらは5枚です。ハコベの学名Stellariaはステラ、つまり星という意味です。5枚の花びらを星形に咲かせます。ハコベの花の特徴は、何と言ってもその花びらで、深く切れ込みが入ったウサギの耳のような形状をしています。そのため、ハコベの花は花びらが10枚あるかのように見えます(画像)。

 ハコベに似た小さな花がほぼ同時に咲いていて、それをミクロな世界で見分けようとすれば、顔を近づけるしかありません。それでも老眼の私にはその違いを見分けることが上手くいきません。では、識別はもっぱら視覚の問題なのかと言われると、どうも私にはそうは思われないのです。幾つかの花を比較する際、知識と視覚の共同作業が不可欠で、老眼を補うルーペも、形態の違いの分類も私たちのもつ知識なのです。

 そのような共同作業の結果、ノミノツヅリとオランダミナミグサ(画像)がハコベに似た花の一部として浮かび上がってきます。花弁の数、形など、それぞれの植物の違いがはっきり分かり、見事に識別できるのです。

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ハコベ

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ハコベ

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ノミノツヅリ

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オランダミミナグサ

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オランダミミナグサ