空には何が似合うのか

 「富士には月見草が良く似合う(太宰治の「富嶽百景」)」とすれば、空には何が似合うのだろうか。富士でも構わないのだが、小さな子供なら、太陽、月、あるいは飛行機だときっと答えるに違いない。あるいは、冬の落葉樹の枝も空によく似合うと老人が呟くかも知れない。

 でも、空に断然似合うのは誰が何と言おうと、雲で、雲しかないのではないか。空の相棒は雲に限る。太陽にも月にも雲がないし、雲があるには水や空気が不可欠で、それがあるのは地球だけなのだから。

 雲のない空はあっけらかんとし過ぎているし、空しく、虚しい限りなのである。梅の樹には梅の花と実が最も似合うように、地球の空には雲がよく似合う。