進化の人為的、社会的側面(Biosociology)(1)

 自然進化(natural selection)と人為進化(artificial selection)はダーウィン以来の伝統的な区別ですが、今では人為進化の役割や比重は急速に増加し、自然進化をその能力で凌駕してしまっています。自然が起こす生物進化より人が起こす人為進化が圧倒的に強くなっていて、その力は日々強化され続けています。20世紀から始まる遺伝学の分子レベルでの成果研究の進展は自然進化を人為進化によって置き換えてしまったと言っても過言ではないでしょう。

 人為進化のささやかな例を顧みてみましょう。私は冬のバラが好きですが、イギリス人にとってはサラブレッドと並んで、バラは人為選択の代表選手です。冷たい空気の中で見るバラの花は芸術作品に似て、私を強く惹きつけます。素朴な美を越えて、計算された、絶妙のバランスをもった色と形の調和によって私を圧倒するのです。それは先人たちの巧みな努力に因るもので、バラの花は芸術や人体に共通する美を確かに分かち持っているのです。実際、その美は自然種のバラを利用しているとはいえ、人為的な審美眼の結果であり、多くの試行錯誤の末に成就されたものです。

*画像のバラを原種の一つハマナス(最後の画像)と見比べて下さい。