スイフヨウの花色と温度

 今年はまだフヨウの花が咲き続けていますが、フヨウの八重咲変種スイフヨウ(酔芙蓉)も元気です。朝咲き始めた花弁は白く、時間がたつにつれてピンクに色が変わる様子を「酔って赤くなる」ことに喩えて、命名されたことはよく知られています。中国中部原産のフヨウ(Hibiscus mutabilis)の種小名mutabilisは「変化しやすい」(英語のmutable)という意味で、その園芸品種がスイフヨウ(酔芙蓉)。スイフヨウは花色の変化がより強調されていて、一日の中で色が変わって行きます。

 このところ温度が下がり、涼しくなってきましたが、午後になってもスイフヨウの白い花色があまり変わらず、夏の頃とは違っていて、少々気になりました。そこで、調べてみると、スイフヨウの花色変化にはやはり温度が関係していました。蕾の時は赤に近い濃いピンクで、朝に白い花を咲かせます。昼には優しいピンク色になり、夕方には濃いピンク色になります。これが夏見ていた花色の変化でした。花の色が変わるのは、アントシアニンアントシアニンとは、植物が紫外線など有害な光から守るために蓄えられる青紫色の天然色素)の合成が理由。アントシアニンは25℃以上の気温で合成され、温度が高いとより色素ができやすく、赤みが強くなります。アントシアニンの合成は温度が25度以上だと進み、低温だとあまり合成されず、紫外線には影響されません。

*「芙蓉」は中国ではもともと「蓮の花」のこと。水の中に咲くものを水芙蓉、木に咲くものを木芙蓉と呼んでいました。日本では蓮を芙蓉という習慣がないので、芙蓉といえば木芙蓉のこと。

朝のスイフヨウ

夏の午後

秋の午後