呼称の変化

 ロシア系住民保護を理由にウクライナに侵攻したロシア。その前例が2008年のジョージアへの侵攻です。黒海の東岸のジョージアは、北岸のウクライナとの間にロシアを挟み、人口が370万人ほどの小国。2008年の侵攻があったため、ウクライナアメリカはロシアの動きをある程度予測できました。かつて私たちはジョージアを「グルジア」と呼んでいました。大多数の国が英語由来の「ジョージア」を使っていて、ロシア語由来の「グルジア」を使っていたのは日本や韓国、中国、旧ソ連の国々ぐらいでした。2008年ロシアに侵攻された旧グルジア政府は、翌年からロシア語に由来する呼称を変更するよう各国に要請していました(その結果、栃の心の出身地はグルジアからジョージアに変わりました)。

 外国の呼称は現地の言葉と違うものが沢山あります。現地の言葉ではない呼ばれ方の国の呼称は「エクソニム(exonym)」と呼ばれます。例えばイギリスやオランダ、ポルトガルといった国名は室町時代から江戸時代の鎖国までに日本との交流があったポルトガルでの呼び名で、それがそのまま残ったようです。日本のエクソニムを調べると、Japan(英語)、Japon(フランス語)、Giappone(イタリア語)、Hapon(タガログ語)などですが、「ジャパン」、「ジャポン」という呼ばれ方が大勢です。

 1991年ソ連の崩壊に伴い、ウクライナが新国家として誕生しました。首都の英語表記を「Kiev」から「Kyiv」に変えることが認められたのは1995年。2018年のウクライナ外務省による「Kyiv Not Kiev」(KievではなくKyiv)運動が広がり、ロイター通信、CNN、BBCなどがKyivを使うようになりました。一方の「Kiev」は「ウクライナはロシアの領土」という主張に合致します。日本語では「ウクライナの地名のカタカナ表記に関する有識者会議」 が、首都名「キーウ、キイフ、キエフ」の併用を認めています。