あちこちでユリの花が目立つようになってきた。スカシユリのバルドイーグルにはショウリョウバッタが乗り、ヘメロカリスの黄色が眩しい。どのユリの花も私たちを惹きつけてやまない。
ユリの原種は北半球に約100種類が分布し、そのうち15種が日本に自生。ヤマユリ、ササユリ、オトメユリ、テッポウユリなど、どれも美しい。ユリの花びらは6枚あるように見えるが、外側にある3枚はがくで、「外花被」と呼ばれる。内側の3枚が本来の花びらで、「内花被」。ユリの花は二つの合作である。その花の中央にはめしべが1本、その周りに雄しべが6本。
ところで、バラの花については、一重の花びらが1枚~5枚、二重は花びらが6枚~10枚、半八重は10枚以上、八重は20枚以上で、もっとずっと複雑多岐。ユリとバラの花には自然と人との絶え間ない企みが交差しているのが見て取れる。
世界にユリの原種は約100種あるが、日本は美しい野生ユリの宝庫。ヤマユリ、カノコユリ、オトメユリ、ササユリ、テッポウユリなど、美しいものばかり。『古事記』、『日本書紀』に登場し、園芸が大流行した江戸時代には、園芸品種のスカシユリが百数十品種も誕生。
江戸時代末期、アジサイなどの植物と一緒にユリをヨーロッパに持ち帰ったのがシーボルト。カノコユリ、テッポウユリ、スカシユリなどの球根が海を渡り、日本のユリは際立って美しいと言われ、園芸化が進んだ。
そして、ユリの球根貿易が始まり、横浜や静岡周辺の山で採取されたヤマユリ、ササユリ、オニユリなどが横浜港から輸出された。明治時代末には、世界のユリ需要の90%を日本のユリが占めたほど。ユリは生糸に迫る外貨獲得の花形になった。