かまくら雑感

 子供の頃、台所の一角に黒く塗られた竈があって、祖母がそこに釜をかけ、ご飯を炊いていたのをよく憶えています。その竈の近くには囲炉裏があり、こちらにも鍋が架かっていて、みそ汁が入っていました。囲炉裏や竈(かまど)に火をくべ、釜や鍋を使って調理していました。こんな台所風景は私が小学生になると、あっという間に姿を消し、水道やガスが登場し、お馴染みの台所に変わってしまいました。

 そんな旧式のかつての台所はなぜか私には冬の方がぴったりするのです。冬の台所の外は一面の雪でしたが、1,2月にはよく「かまくら」をつくって遊んでいました。かまくらは雪を積み上げ、中を空洞にしたものです。「かまくら」の形が竈に似ているので「かまくら」と呼ばれるようになったとも、あるいは、神座(かみくら)と呼ばれる神様の御座所が由来だとも言われていて、正式な由来はわかっていません。

 その「かまくら」についての民俗学となると、私の育った地域では伝承を聞いたことがありませんでした。かまくらが主役になる伝統的な行事もなく、言い伝えを聞いたこともありません。ところが、例えば秋田県の横手では「かまくら」や「なまはげ」が伝統行事とされてきました。水に恵まれなかった横手では 水神様を祀ってきましたが、その水神様がかまくらの中にも祀られるようになりました。奇妙なことに「かまくら」だけでなく、「なまはげ」も子供が主役の行事です。どちらも子供が主体となっていて、神を祀り、神に脅されるのは子供です。

 私が生まれ育った地域には横手のような伝承や行事はなかったようですが、かまくらはよくつくって遊んでいました。確かに夜の雪室の中が蝋燭の光で輝く、幻想的な光景は子供だけでなく、大人をも魅了します。

妙高地域にもかまくらなまはげの伝承があれば、是非知りたいものです。