アカメガシワの花:子供の頃からいつも身近に見てきた先駆種

 先駆種は植生(ある場所に生育しているすべての植物)が遷移していく初期に見られる植物種のことで、先駆植物、パイオニア種、パイオニア植物とも呼ばれます。新しい空き地が生まれると、そこに最初に映えてくる樹木が私には先駆種の代表例で、アカメガシワはその一つ。

 アカメガシワ(赤芽槲、赤芽柏)は子供の頃よく見ていただけでなく、今でも湾岸地域でよく見ることができますが、その割には名前が知られていないようです。落葉高木で、山野に生えており、春にでる若葉は紅色をしています。雌雄異株で、樹高は5 - 10メートルほどに達します。花期は6 - 7月で、枝先に穂になって小さな花を多数つけ、雄花には黄色の葯が目立ちます。雌花は雄花よりも小さく、花数も少ないようです。

 アカメガシワは子供の頃からいつも見ていたせいか、好奇心が薄れ、名前を調べる気にもなりませんでした。私がその名前を知ったのは中年になってからです。先駆種のアカメガシワクサギはいずれも成長が早いのですが、樹形はまとまらず、森林の遷移によって消えていきます。クサギやナンキンハゼは雌雄同株ですが、アカメガシワは雌雄異株です(雄と雌が分かれているのが異株、雄と雌が同体なのが同株)。

*ヒトは雌雄異体の両性生物ということになっていますが、近年のLGBTの運動を見ていると、人は雌雄同体、雌雄異体が入り混じっていて、個体が成長に応じて雌雄を自ら選択できる自由を求めています。その意味ではどの生物にもない、選択の自由という独特の特徴を持っているようにみえます。ただ、ヒト以外の動植物と違って、人の場合はその特徴が繁殖への繋がりがあるとしても、極めて間接的です。

**先駆種のアカメガシワクサギ(雄性先熟)、ナンキンハゼ(雌雄同株で、秋に紅葉)などと共に森林の遷移によって消えていきます(湾岸地域は埋め立てによる造成地で、そのため先駆種が目立つ)。先駆種は寿命が短く、数十年で枯れるものがほとんどです。それに対して、先駆種の陰では陰樹として遅れて育ちますが、成長して林冠を構成しても枯れることがなく、同じ種の世代交代で安定した状態の森林を維持できる種が極相種です。

雌花

雌花

雄花

雄花

 

ブラックベリーの花と実

 バラ科キイチゴ属のブラックベリーBlackberry)の別名はセイヨウヤブイチゴ(西洋藪苺)。花弁は5枚から7枚で、中心部に多数の雌しべがあり、その周辺に多数の雄しべがある点は、キイチゴ属の特徴をよく示している。

 ブラックベリーはブルーベリーと比べて果汁が多く、ずっと大きな実をつける。ブラックベリーアメリカ中部が原産。ブラックベリーも実がつき始めの頃は、ラズベリーと同じように赤色だが、次第に変色し、食べごろには黒い色になることから、この名前がつけられた(画像は黒くなる前のブラックベリー)。

 

トケイソウから機械論的世界観へ

 5月23日にトケイソウについて記しました。トケイソウ(時計草、パッションフラワー)はトケイソウトケイソウ属に分類される植物の総称。トケイソウはその花の形を時計の文字盤に見立てたことからつけられた名前で、私には植物機械論や機械論的自然観のシンボルに見えて仕方ありません。

 ガリレイは自然を数量的に測定できる要素に分解し、それらを関数関係として数学的に定式化し、デカルトも数学的に表現できるもので世界(自然)を捉え、普遍数学(mathesis universalis)を構想し、ニュートンはすべての自然現象が引力に基づく因果法則に従うことを明らかにしました。そんな機械論的自然観のルネッサンス以来のモデルが機械時計で、トケイソウはその機械時計によく似た姿なのです。

 

ウメエダシャクは美しいのか?

 ウメエダシャクはチョウによく似たシャクガ科のガ。翅は白色と黒色のまだら模様で、腹部は淡黄橙色で黒色の斑紋が並ぶ(画像)。日中に活動し、羽ばたきながら緩やかに飛び続ける。幼虫はウメやサクラの木の葉を食べる。そのウメエダシャクが咲き始めたアジサイの花にとまっている。

 ウメエダシャクの幼虫はいわゆるシャクトリムシ(尺取虫)で、幼虫はウメなどバラ科の葉を食草としている。それほど優美でない上に、姿が毒々しいので気持ち悪いと思う人が多く、「醜いチョウ」と評する人までいる。

 ウメエダシャクについて、「みにくいアヒルの子」を真似て、「醜いチョウ、美しいガ」と言われて、素直にその通りだと納得できるだろうか。「醜いチョウ」には「チョウは総じて美しいが、中には醜いものもいる」という意味が、「美しいガ」には「ガは総じて醜いが、中には美しいものもいる」という意味があるようである。だが、「醜い、美しい」の評価は決して客観的なものではない。とはいえ、まるで決まっていない訳でもない。

 画像のウメエダシャクを見て、あなたはそれを醜いと思うだろうか、それとも美しいと思うだろうか。美醜に関する判断を再確認する機会になるのではないか。

 

クレロデンドルム・ブルーウィングの花(2)

 クレロデンドルム・ブルーウィングについて既に記しました。その姿は単に綺麗という訳ではなく、怪しげな暗示に満ちています。学名のClerodendrumギリシア語の「cleros(運命)」と「dendron(樹木)」に由来し、呪術に使われていたことに由来すると書きましたが、花姿からそれを実感してみて下さい。長く、曲がった雄しべと雌しべは何かを暗示しているようです。



クレロデンドルム・ブルーウィングの花(2)

 クレロデンドルム・ブルーウィングについて既に記しました。その姿は単に綺麗という訳ではなく、怪しげな暗示に満ちています。学名のClerodendrumギリシア語の「cleros(運命)」と「dendron(樹木)」に由来し、呪術に使われていたことに由来すると書きましたが、花姿からそれを実感してみて下さい。長く、曲がった雄しべと雌しべは何かを暗示しているようです。

 

クレロデンドルム・ブルーウィングの花

 クレロデンドルム・ブルーウィングはクマツヅラ科の非耐寒性常緑低木。5月~9月頃に青い蝶が羽を広げているような小さな花を咲かせます。雄しべも雌しべもカールしていて、その花姿から青い妖精、ブルーバタフライブッシュなどと呼ばれています。

 でも、その姿は単に綺麗という訳ではなく、怪しげでもあります。学名のClerodendrumギリシア語の「cleros(運命)」と「dendron(樹木)」に由来し、呪術に使われていたことに由来するようです。