フェイジョワとドクダミとテントウムシ(昨夜のものの改訂版)

 私の哺乳類に対する常識は昆虫に対する常識とは随分違っている。哺乳類に対する常識には私自身の経験が入っているのだが、幼虫、蛹、成虫と変態する昆虫の成長を自ら経験することができず、私のような哺乳類にはその成長を経験し、実感することができない。つまり、私には昆虫の成長を経験することができないのである。

 哺乳類には経験することができず、それゆえ哺乳類に不可解な成長が昆虫の成長であり、哺乳類は昆虫の成長を経験することが原理的に不可能なのである。つまり、連続的な成長と不連続的な変態は異なる成長過程である。とはいえ、個体の一生の交代が世代交代であり、それを通じて生物は生存し、進化していく。その点では哺乳類も昆虫も同じように世代交代を繰り返し、進化していく。

 フェイジョアの葉の上にいるのはナミテントウの蛹(さなぎ)と思われる。生物学から遠ざかっていた私には画像が蛹だとは最初推測できず、テントウムシの成虫ばかり探していた。成虫を探すことに熱中するあまり、テントウムシ完全変態することをすっかり忘れていたのである。

一方、近くのドクダミにいたフタモンテントウは成虫であったため、これは図鑑を調べるだけですぐに特定することができた。

*画像は以前のものと同じ

 

リクニス・コロナリアの花

 シルバーリーフとなれば、シロタエギクとフランネルソウが今風の流行。湾岸地域でもこれら二つが目立っています。

 ナデシコ科のリクニス・コロナリアはアフリカ北西部、ヨーロッパ南東部から中央アジアなどが原産地で、その外観から「フランネルソウ」と呼ばれ、白い綿毛に覆われた、柔らかくて厚みのある葉が特徴です。日本には江戸末期に入りました。昔はフランネルを「ネル」と呼び、冬用のシャツや寝巻きに使っていて、私も着ていたのを憶えています。

 濃いローズや純白の花がポピュラーで、花弁にもビロードのような質感があります。リクニスはギリシャ語のlychnos(ランプ、炎)に由来し、コロナリアは「花冠のような」の意味。

*和名のスイセンノウ(酔仙翁)は、ほろ酔いの仙人を連想した名前。

 

ビワの実

 ビワは実が主役であることを私に印象づけたのは坪田譲二の童話「ビワの実」。そこには樵の金十のビワを食べる体験と、ビワの木の再生が描かれている。

 ビワ、アンズ、ウメ、モモ、サクランボなどのバラ科植物の種子や未熟な果実の部分には天然の有害物質(シアン化合物)が多く含まれている。一方で、熟した果肉に含まれるシアン化合物はごく僅かで、食べることができる。だが、種子を乾燥して粉末にした食品の場合は、シアン化合物を一度に大量に食べてしまう危険性が高まるので、ビワの種子の粉末は食べない方がよさそうである。

 ビワはバラ科の常緑高木。枝先に帯黄白色の五弁の小花をつける。開花は果樹の中ではとても遅く、実がなるのは翌年の5月(画像)。食用となるその実もビワと呼ばれている。原産は中国南西部で、四国や九州に自生する。果樹として栽培され、葉は濃い緑色。

 このようにまとめてみても、雪国育ちの私にはビワは馴染みが薄く、異国の果物というのが子供の頃の漠然とした理解なのだが、それが今でも維持され、残ったままなのである。

 

フェイジョワとドクダミとテントウムシ

 私の哺乳類の常識は昆虫の常識とは随分と違う。幼虫、蛹、成虫と変態する昆虫の成長は私のような哺乳類の成長とはまるで異なる。少なくとも、哺乳類には通用しない成長が昆虫の成長であり、哺乳類は昆虫の成長を知る由もない。従って、哺乳類の一生は昆虫の一生とは随分異なる。とはいえ、個体の一生の積み重ねが世代交代であり、それを通じて生物は生存し、進化していく点では哺乳類も昆虫も変わりはない。

 フェイジョアの葉の上にいるのはナミテントウの蛹(さなぎ)と思われる。生物学から遠ざかっていた私には画像が蛹だとは推測できず、テントウムシを調べようとして、成虫ばかり探していたのである。探すことに熱中するあまり、テントウムシ完全変態することをすっかり忘れていたのである。一方、近くのドクダミにいたフタモンテントウは成虫で、これは図鑑を調べるだけですぐに特定できた。

 連続的な成長と不連続的な変態は異なる成長過程であり、生物の成長を考える際にその異なる成長過程を忘れてはならないのである。

 

追憶のドクダミ

 私が生まれた家の裏庭に群生していて、祖母が愛用していたのがドクダミ(蕺草、蕺)。別名はドクダメ(毒溜め)、ジュウヤク(十薬)、ジゴクソバ(地獄蕎麦)などで、どれも民俗学的妄想を掻き立ててくれる。ドクダミ全体に独特の香りがあり、子供の頃はこの臭いが陰気で、好きになれなかった。毒を抑えることを意味する「毒を矯める、貯める」から、「毒矯め(ドクダメ)」が転訛し、「毒矯み(ドクダミ)」と呼ばれるようになったというのが通説だが、尤もらし過ぎて、何かつまらない。子供の私は祖母のドクダミ信仰を鵜呑みにして、ドクダミは万能の薬だと単純に思い込んでいた。

 ドクダミはハート型の葉の先端に、十字型の白い花を咲かせる。今でも湾岸地域では道端のあちこちで、よく見かける。それは子供の頃の風景と何ら変わらない。四つ葉のクローバーではないが、5弁のドクダミを見つけたりして、子供時代の記憶がドクダミの咲く道端で蘇ってくる。老人の私の前に意外に美しいドクダミの花が今も眩しく輝いている。

 

ペンステモンの花

 ペンステモン(ジギタリスPenstemon digitalis)は別名が「シロツリガネヤナギ」で、北アメリカ原産の多年草ジギタリス(digitalis)はラテン語で「指の様な」という意味で、花の形が手袋の指に似ているため。

 ペンステモンは釣り鐘形や、筒状でふっくらした花が連なるように咲き、北アメリカ西部からメキシコを中心に約250種の原種がある。長い穂になって咲くものや房状に固まって咲くものなど、バラエティに富み、花色も豊富。

 ペンステモン・ハスカーレッドは殆ど黒色の赤紫色の茎葉とほんのりと紫みを帯びる白色の花をつける園芸品種。開花時期は晩春から晩夏で、今花をつけている。ペンステモン・ミスティカも銅葉タイプの園芸品種。花とブロンズグリーンの葉のコントラストが美しい。ラベンダーピンクの円錐状の花を咲かせる。

*画像は最初の二枚がハスカーレッド、残りがミスティカだが、初夏のためか花や葉の特徴がわかりにくい。

ハスカーレット

ハスカーレット

ミスティカ

 

フェイジョアの花

 フェイジョアはフトモモ科の常緑低木。湾岸地域では果物として栽培されるのではなく、庭木や生垣用として使われている。南米原産で、果物としては主にニュージーランドで栽培され、別名はパイナップルグアバ

 花弁は外側の白と内側の赤に分かれ、雄しべの鮮やかな赤が引き立っている。今咲いているピンク色の花びらは、少し肉厚でふっくらとした触り心地がある。赤く尖った雌しべをたくさんの雄しべが囲むように空を向いている。花を食べると、とろけるような甘さがあり、正に食べられる花。フェイジョアの実のシンプルな楽しみ方は、生のまま食べること。

 キウイフルーツの栽培熱に刺激され、キウイに次ぐ新果樹としてフェイジョアが日本に紹介されると、瞬く間にブームになった。フェイジョアの生産地域ができ、ニュージーランドからもフェイジョアの果実が輸入されたが、店先ではほとんど売れなかった。結局、フェイジョア熱はあっという間に終わってしまった。そのためか、私は食べたことがなく、見た記憶も定かではない。