カメムシ:補足

 「鳥の卵は単純な美しさを具え、その美には小さな子供でさえ感動する。虫の卵にはこうした完璧な美しさをもつものはめったにない。その例外とも言えるのがカメムシの卵である」(『完訳ファーブル昆虫記 第8巻 上』奥本大三郎訳、集英社刊)とファーブルはカメムシトその卵を絶賛し、カメムシが臭腺から出すあの匂いを、「身につけている虫の香水、化粧油」とまで褒め称えています。カメムシの卵はせいぜい1ミリ程の大きさ。ファーブルはなんとかその美しさを伝えようと、言葉のもつ力の限りを尽くして、カメムシの卵の美しさを、19世紀風に賛美するのです。ファーブルが絶賛するオウシュウヒメナガメというカメムシは、春に菜の花に集まるナガメにそっくり。

 4年ほど前からナガメ(菜亀)を記してきたのですが、和名は「菜の花につくカメムシ亀虫)」の意味で、アブラナ科の植物に集まることから名づけられました。成虫は橙地に黒の紋、あるいは黒地に橙の条紋を持ちます。ナガメが集まって交尾していたのが野生化したセイヨウカラシナです。これらの画像からファーブルのカメムシへの熱狂を想像してみて下さい。

カメムシの章の扉にはオウシュウヒメナガメというナガメの一種であるカメムシのタマゴが大きく描かれ、本文では「小さな壺のような卵は、葉の上に固めて産み付けられる。壺には網目模様が描かれ、上部には蓋がついている。蓋の周囲には細かいギザギザがあり、壺をかっちり密閉している。‥・どうやって幼虫は、この頑丈な卵から孵化するのか。」と述べられています。