セイヨウアブラナの花

 「菜の花」と私たちが呼ぶのはアブラナが美しい花をつけたときの状態です。ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)は、アブラナ科アブラナ属の野草で、多様な栽培植物の原種と考えられていて、学名でそのまま呼ばれています。古代から西アジアから北ヨーロッパの大麦畑に生える雑草で、農耕文化の伝播と共に作物の種子に紛れて移動したと考えられています。驚くべきことに、白菜、カブ、キャベツやブロッコリー、小松菜などの野菜はどれも、アブラナ属のブラッシカ・ラパ、ヤセイカンラン(Brassica oleracea)という二種の野草から生まれた変種です。さらに、食用油のキャノーラ油はブラッシカ・ラパとヤセイカンランの交配種セイヨウアブラナBrassica napus)から作られます。

 では、ブラッシカ・ラパとヤセイカンランはどこからやってきたのか。100年以上前から、科学者たちはその原産地を探し求め、ようやくその答えが見つかりました。ブラッシカ・ラパはアフガニスタンパキスタンの国境に近い山地が原産、ヤセイカンランは地中海東部が原産。

アブラナ属は「植物界の犬」

 アブラナ属の植物は「植物界の犬」と呼ばれるほど変種が多い。栄養を豊富に含むアブラナ属の野菜は世界中で売られ、その額は年間140億ドル(約1兆5400億円)以上にもなる。だが、その多様性が原産地の特定を困難にしていた。飼い犬が野良犬化するように、栽培されているアブラナ属の植物も簡単に野生に戻ってしまう。黄色い花を咲かせるアブラナ属の植物は沿岸の草地や道端、畑など、世界のいたるところに生えている。ダーウィンイングランドの海岸に自生するものがヤセイカンランの祖先と考えていた。

**画像はセイヨウアブラナ