ケイトウの花

 ケイトウ (鶏頭、鶏冠)はヒユ科の一年生植物。ケイトウの花に見える部分は花ではなく、隠れて小さい花がついています。アジサイやカラーなどと並んで、ケイトウの花もその「隠れ花」タイプです。

 原産地はアジア、アフリカの熱帯地方で、日本には奈良時代に中国を経由して渡来しました。花の色は赤や黄色を基調とし、橙、紫、ピンクなど多様な色の園芸品種があります。花穂の形状がニワトリの鶏冠(とさか)に似ていることからこの名がつきました。

 最初の二つの画像はノゲイトウ(野鶏頭)と呼ばれ、花色は淡いピンクから濃い赤紫色で、ロウソクの炎のような形をしています。画像はセロシアアジアンガーデンという栽培種。一方、炎のような形の花を咲かせるトサカ系(迫力ある大型の「トサカケイトウ」)やクルメ系は切花以外では見かけることが少なくなり、三つ目の画像は矮性のウモウケイトウ(羽毛鶏頭)で、「きもの」と呼ばれるケイトウです。いずれもセロシアと呼ばれていて、現在のケイトウのイメージをつくり出しています。

 昭和世代の私は、「ケイトウ」となれば、「トサカ」系の花を思い出します。暑い夏の陽の中で咲く大きな赤いトサカは夏の花の思い出の一つです。最後の画像は伊藤若冲「鶏頭蟷螂図(けいとうとうろうず)」(1789年)です。ケイトウの美しさから逃れられなくなったカマキリ(蟷螂)は欲望への執着の象徴で、ケイトウの花の色彩が強烈です。子供の記憶に若冲の絵が重なっているのが私のケイトウで、そのためか、セロシアはまるで別の花に思えます。