コブシの集合果

 ハスとスイレンは見かけが似ていても、まるで別物。でも、コブシ(辛夷)とモクレン木蓮)は、共にモクレンモクレン属の落葉広葉樹。いずれが好きかと問われると、私は答えに窮します。

 コブシの樹も花も申し分のない風情をもっているのですが、何とも形容しがたく、不規則なアモルファスのような姿をしているのがその集合果。それがとても対照的で、コブシに独特の存在感を与えています。私には均整の取れた、優等生のコブシがなぜあんな不定の形の実をつけるのか腑に落ちないのです。

 コブシは春にモクレンに似た白い花を咲かせることは誰でも知っていますが、その花が終わると、見向きもされずに忘れ去られてしまうようで、秋の実の方はあまり知られていません。袋果(たいか)という袋の中に入っている実が、握りこぶしのように見えることからコブシの名がついたようです。

 初夏には緑の袋果が初秋には色がつき出し、やがて赤みを帯びてきます。画像のように、今年も既に色づいています。秋にコブシの実が熟し、集合果の袋状の皮が破れ熟した実が顔を出してきます。

 コブシやハクモクレンの集合果はいずれも似た形をしていて、弾けると、中から大きめの赤い種子が糸を引いて出てきます。コブシは種子を包む袋が垂れ下がって、綺麗なピンク色になるので、特によく目立ちます。

 コブシの集合果は発生阻害としか思われないような形状で、大きさも様々、袋菓が結合し、所々に瘤が隆起しています。私たちが食べる果実は色や形が整っていますが、コブシの集合果はそれとは正反対の形です。コブシの集合果はその異様な形状で私の好奇心を掻き立てるのです。